介護老人保健施設 しょうわ
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34 「バク・バク・バク・バク」

街のネオンが消えるころ、ゴミに群がる烏をよそに酔っ払いは家路を急ぐ。
一夜の思い出を抱え、眠りにつくため家路を急ぐ。
そして今夜も夜が明けた。若者の上にも、おっさんの上にも朝陽は昇った。
大人たちは今日も仕事に戻っていく。
ブルーシートに囲まれた段ボールの中でおっさんは眠った。
四畳半の部屋で、けだるい体を布団にあずけて若者は眠りについた。
遠くに聴こえる波の音。都会の喧騒。
   「にいちゃんは幸せかい?」
              不意におっさんの声がした。
   「えっ?なんですって」「幸せか?ですって」
   「そもそも幸せってなんですか。幸せって元気に育つことですか。
    徒競走で1等をとって親に褒められることですか。勉強ができることですか。
    結婚することですか。子供が生まれることですか。仕事が上手くいくことですか。
    金持ちになることですか。誰かに認めてもらうことですか。」
若者は、答えてから妙にいらだつ自分に気付いた。
人の目を通してしか存在できない自分に。
幸せってなんだろう。幸せって・・・。
若者は深い眠りに落ちた。
そして考えた。
ゆめ、しあわせ、こころ・・・

国連バク保護委員会「南の島プロジェクト」最終報告より

バクは、南の島で順調に繁殖しています。しかし、南の島を出たバクの80%は下痢、嘔吐、食欲不振などにより衰弱死してしまいます。死亡原因について、現在大規模な調査が行われています。
バクはなぜ死んでしまうのか。急激な環境変化に適応できないという専門家がいる一方、バクのエサに化学物質や環境ホルモンなどが混入しているのではないかという専門家もいます。
ところで、環境はバクだけの問題でしょうか。温暖化や砂漠化はいつか私たち人類にも影響を与えるでしょう。
「南の島プロジェクト」から帰国した若者たちの今についても、今後詳しく調査する必要があります。どうやら帰国した若者の多くも、環境に適応できないことが分かってきました。今後も注意深く観察する必要があります。

夢はみるもの。夢はもつもの。そして、ゆめは叶えるもの。
ゆめはみつづけるもの。けっして終りのないもの。終わらせてはいけないもの。
幸せはみるもの。幸せはえがくもの。そして、しあわせは手にするもの。

浅い眠りの中で若者は夢を見た。
こころ、さまようゆめをみた。
若者のゆめはまだ叶っていない。