介護老人保健施設 しょうわ
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しょうわ版クリティカルパスの作成

~大腿骨頸部骨折用クリティカルパスの試行と今後の課題~

リハビリ課 渡部 均

はじめに

 当施設は平成10年7月に開設以来、在宅復帰と在宅生活支援、終末期ケアにいたるまで総合的なアプローチを継続して行なっている施設である。当施設においても多くの施設と同じように、従来のケアプラン様式にて計画立案、実施を行なってきた。80%以上という高い在宅復帰率を維持してきた当施設においても、平成18年4月の介護保険改正の流れを受け、より明確な形での在宅復帰に向けたプラン作りが必要とされてきた。
 当施設では、従来のケアプランと共に簡易的クリティカルパス(以下、パスとする)を使用してきたが、介護保険改正に伴い入所期間の短縮化も施設の質を問う基準となってきている背景もあり、総合的なプラン作りとより効率化されたアプローチが必要とされることとなった。入所において病院等で用いるパスを基本に、比較的経過の予測が立てやすく、しかも高齢者に多い大腿骨頸部骨折について項目や内容を施設独自のものにアレンジして、数名の利用者に対し試行した。その結果、さまざまな問題点や今後の課題が浮かび上がってきた。これより、その問題点、課題を説明し、考察を述べていく。

パス作成までの流れ

 大腿骨頸部骨折の手術後の対象者を基に作成。退所までの期間は、術後、抜糸し病院を退院してから入所となるため、基本的には1ヶ月とし、横軸に日付記入欄を設けた。効率的なアプローチを行うため、縦軸に到達目標や医師・看護師、介護職員、リハビリ、栄養課、相談員と全部署の項目を設けた。情報共有の目的からカルテに挿入するため、用紙のサイズはA3を使用し、各部署のケア項目を表示すると共に、各部署の情報を書き込める形式とした。
 部署毎にケア項目の提出を依頼。それらを集約し、一覧表的な原案を作成。その書式をさらにリハビリ課が中心になり、疾患に適合する情報を盛り込める形式に修正を加え、試行に際しての最終的な原案を作成。ケア項目の検討中、骨接合術、人工骨頭どちらの場合も脱臼の有無以外はほぼ同じとの結果に至り、術後という形で統一した。ゴールは一般的に実用歩行となるが、高齢者の場合は難しいこともあるため、車椅子での移動も含め対応できる形にした。

パスの試行

 人工骨頭術後の方は、術後2週でリハビリ目的のため入所。骨折前は歩行自立。入所時は荷重痛が強く、耐久性は低いが歩行は可能であった。しかし、MMSE8点と重度の認知症を有しており、危険認知は低い状態。歩行可能であり転倒のリスクも高度であった。また人工骨頭脱臼のリスクも有している。荷重痛に関しても訴えがあいまい。歩行補助具の使用も困難と思われた。上記の事実から、歩行レベルの想定が困難であった。また今後の生活パターンを検討するうえで、危険認知の低下に加え、骨折による身体機能の低下があることから、ケア項目の目標記入に関して困難を極めた。そのため1週毎にカンファレンスを行い、次の週の目標をパスに記入していく形とした。
 骨接合術後の方は、1ヶ月病院にてリハビリを行っており、歩行器使用での歩行が可能な状態で入所となった。骨折前は四点杖で歩行していたが、認知症も軽度なことから骨折前の歩行手段が獲得できると予想された。ケア項目の記入に関しても骨折前の状態が目標となるため、比較的容易であった。

問題点

 ある報告で大腿骨頸部骨折の患者のうち3割が認知症を合併していたとある。認知症をバリアンス(想定された標準的な経過とずれた結果のこと)としてか、パスに組み込むか、どのような形であれ、歩行獲得など具体的な予後予測にも影響するため、確実に取り上げる必要がある。カンファレンスも全職種の日程調整が難しく、確実に1週に1回開くことは難しかった。
 ゴールを1ヶ月としたが、家族の受け入れ態勢やその他のさまざまな問題により、試行した全員が入所期間は1ヶ月を超えている。その場合、2ヶ月目以降のパスをどうするかが決定しておらず、パスの流れが一時中断されてしまった。
 用紙に関してもサイズ的な問題があり、記入形式を取ったものの記入欄を縮小せざるを得ない。基礎的な数値データに関しては記入が可能だが、介護職員が行うADLの介助方法などは短文や単語で記入する場合が多いため、必要な介助動作を細かく記載することが困難であった。

今後の課題

 施設でのパス運用にあたって考慮する点は、やはり認知症の合併を含めた高齢者の持つ疾患の多様性への対応と、介護部門との連携を必要とされることである。高齢者の場合、種々の疾患を合併している場合が多いため、項目を吟味しないとパス適合者がゼロに近いという結果にもなりかねない。今後はさらに試行を重ね、バリアンスの傾向を把握した上で、バリアンスを考慮した形のパスの作成やバリアンスに対するアルゴリズム(なんらかの問題を解くための手順のこと)を作成していく必要がある。また、今回の試行中、記入欄の大きさの問題があったが、情報の統一と伝達も重要な要素であるため、記入欄の検討、別途記載用紙を設けるなど対応を検討する必要もある。
 パスのメリットとしてチームアプローチの教育的手段として用いることで、チームの成熟にも役立つという点があるが、その反面ケア内容を一覧化することでレシピケアに繋がりやすいというデメリットも考えられる。項目の選定、書式の検討において、デメリットを生まない体制作りも必要とされてくるであろう。
 さらに内容が吟味されてくると、パス運用に必要な部分が明確化され、内容を単純化した「家族版のパス」が作成可能になると考えられる。入所時に家族に対し目標を示すと共に、退所に向けての意識付けを行うことで、家族の受け入れに関しても良い影響を与えることも可能となる。
 今後は他のさまざまな疾患のパスを作成していく予定だが、作成の段階ですでにチームアプローチが開始されている。より一層、他職種との連携を密にしながら、しょうわはもちろん、老健のシステムに合ったパスの作成を目指していかなくてはならない。